ケント・ギルバート氏は1970年代に来日し、1980年代からテレビに出はじめ、人気者となったアメリカ人の弁護士である。
そんな彼が、朝日新聞が慰安婦関連記事を撤回して以来、歴史問題に関する発言で注目を集めている。そのせいか最近ネット上で彼のことを「ビジネス右翼」だと揶揄する人をみかける。しかしそれははたして妥当な評価だろうか?
ケント氏は以前、著書の中で、「強制連行」されてきた在日の指紋押捺は廃止すべきという意味のことを書いていた。 また慰安婦についても、朝日新聞などが流布した「従軍慰安婦」を信じていたという過去を告白している。
だけど指紋押捺の本当の問題は、僕たちみたいな外国人とは別の、はっきり言えば僕とは直接関係ないところにあるんですね。それは韓国人のことです。(中略)ヒューマニテリアン(人道主義者)が「人権侵害だ」と文句をいうのと、韓国人が怒っているのとは内容が違います。
いま日本に韓国人が大勢いるのは、日本と韓国の過去の不幸なつながりの結果ですね。僕らは自由意志で来ているけれど、何代も何代も日本にいる韓国人は、最初から来たくて来たんじゃないし、帰ろうと思っても、そう簡単に帰れません。そういう人たちと僕みたいのと、いっしょの外国人扱いしているのは、ちょっとおかしいんじゃないかと思うんですね。
ケント・ギルバート『ボクが見た日本国憲法』(1989)
正直にいうと、昔は私も戦時中、日本軍が韓国人女性を強制連行したと信じていました。深い根拠があったわけではありません。新聞の報道や関連書籍のストーリーを漠然と正しいと思い込み、わざわざ事実を確認するまでに至らなかったのです。「約20万人の被害者数は多すぎないか」とは思いましたが、日本軍が悪行を働いていたという先入観が働き、慰安婦の強制連行を疑ったことはありませんでした。2015 http://ironna.jp/article/958
保守系の友人たちは「従軍慰安婦問題なんて無かったんですよ!」と何度か私に教えてくれました。しかし私は全く聞く耳を持たなかったので、彼らは密かに私を馬鹿にしていたかも知れませんし、彼らの信用を失ったかも知れません。2014 http://ameblo.jp/workingkent/entry-11913718096.html
つまり彼は、かつては在日や半島本国の立場に立って、旧日本軍や日本政府に対して批判的な言動をしてきた人なのである。 その彼が現在はほとんど正反対の主張をしている。一部の人にはそれが転向したように映るのかもしれない。
しかし、かつて「強制連行」「従軍慰安婦」などについて嘘を信じこまされ、その立場に立って擁護的な主張をさせられ、のちに真実に気づいた外国人が、(少なからずの怒りをもって)転向するのはむしろ当然ではないだろうか。
もしこの転向がビジネスと呼ばれるのであれば、歴史観を転向した人は(筆者を含め)皆「ビジネス右翼」になるだろう。
(終)