統一教会・有田芳生

有田芳生『統一教会とは何か』(1992)より引用:

韓国では統一教会員を増やす運動が、91年9月から行われていた。前項でも触れたが、文鮮明が提唱した「故郷へ帰れ」という「還故郷」運動がそれである。年を取った信者が統一教会や統一教会系企業を退職し、あるいは退職しないまでも週末に農村へ帰り、日本人女性との結婚をエサに信者獲得を主目的とする布教を行うというものだ。(中略)
韓国では農村に暮らす男性の結婚は社会問題になるほどである。(中略)結婚できないからといって自殺者まで出るほど、嫁不足は深刻なのだ。特に40歳代男性の結婚相手を見つけたものは、村長より尊敬されるとまで言われている。そんな状況に置かれた農村男性に向かって統一教会に入れば結婚ができるという勧誘が行われたのだ。「統一教に入れば、教養のある日本人女性と結婚ができる」と宣伝されていたのである。(p.74)

ある韓国人信者は「日本は戦争中に韓国に対しひどいことをやってきた。その贖罪意識が日本人信者にはあるから、韓国人の言うことを聞いて当たり前だ。お金を多く出すのも当然のこと」と語った。(p.75)

元信者日本人女性A:「工場の廊下で毛布一枚にくるまり、雑魚寝をした。その時日本人男性は外で寝るように指示されたのに、韓国人男性は屋内で眠っていた。教会の教えに、韓国がアダム国家で日本はエバ国家だというものがあるが、日本人は韓国人に尽くすべきだという教えが、こんなところにも出ているのだなあと思った」
「11月1日、再度相対者の親族をまじえた挙式が地方の教会で行われた。相対者の生活状況は、日本で教えられていた以上にショックなものであった。田舎道を車で揺られながら山のふもとの農村に到着した。両親の住む家は、小屋のようなところだった。しかし、なにより辟易したのは〝お手洗い〟だった。穴があるだけのもので、夜は灯もなく、落ちるのではないかと不安のあまり腹痛がしたほどだった。また、男性は飼っていた牛の肥だめに用を足していた。もちろんお風呂も水道もなく、水回りはすべて井戸にたよっていた。想像を絶する生活水準にとまどったのは私だけではなく、ほとんどの日本人女性はかなり驚いた様子だった。長男の相対者を与えられた日本人女性も数多くいて、彼女たちには同情を禁じ得なかった。彼女たちは、生涯、片田舎の農村で、農作業や家事に追われながら過ごすのだろうか。実際にそのようにしている韓日(韓国人と日本人の組み合わせをいう)の先輩家庭も多かった」
「十年間、無報酬で朝から晩まで働き、さらに理想としていた結婚にも裏切られ、悔いても悔やみきれないが、もうこれ以上の犠牲者を出してはいけないと思う。(中略)宗教法人をかくれミノに、若者の「社会のため、人のために生きたい」という純粋な心を利用する巨大な詐欺的集団を許すことはできないと思う」(p.131-139)

元信者日本人女性B:「88年の10月25日、夜11時をすぎたころ、総団長から電話があった。「おめでとう。韓日祝福に君も決まったそうだよ」(中略)翌日には古田社長による結団式があるという。(中略)古田社長の話は、日本人はパンくずを拾う犬の立場で、韓国人は人間で、乞食に等しい私たちを王子様のもとに嫁がせようとするメシアの愛に感謝しなければならないというものだった。結婚式が終わったら、日本の保護のもとから離れるので、たとえ、日本人の大嫌いな姑と、新興の全くない相対者と韓国の山奥でキムチのはじをかじりながら農業をすることになっても、日本人の信仰進行で乗り越えてほしいという言葉でしめくくられた」(p.193)

「相対者に会いに、韓国の女性たちがよく遊びに来た。カトコトの英語でもすぐに仲よしになったが、彼女たちは、「日本の女性は頭もよいし、背も高くて自分たちは恥ずかしい」と言った。そんなことはないと打ち消しながら、たしかにこの教会にいる日本人女性は背が高いことに気が付いた。全員160センチ以上はあるだろう。考えてみたら、十人いるうちの半数は大卒で、一人を除いては、短大を卒業している。まさか、そんな外的な条件で韓日祝福を選ぶはずはないと思いながらも、日本の食口(信者)とは違う比率なのが気になった」(p.198)

これらの取材は92年春に二度にわたって行ったが、その機会に協力体制を取ることができた韓国人ジャーナリストたちの努力に多くを負っている。韓国で統一教会系企業や統一教会幹部から話を聞いて感じた最大のものは、この組織が「統一系企業」と呼ばれているように、経済組織だと常識的に思われていること、日本の信者たちが文鮮明のために生活のすべてをささげていることが韓国人信者たちには信じられないということであった。(p.26)

有田芳生『「神の国」の崩壊』(1997)より引用:

(Aさんは)七人兄弟の次男で34歳。家の農業を手伝っているという。統一教会には、一年前に入ったという。(中略)「入信した動機は?」と訊ねると、いともあっさりこんな言葉が返ってきた。「統一教の牧師に『信者になれば結婚できる』と言われたから」
Aさんに質問を続けた。Q.希望の相手は「日本人です」Q.統一教会のいいところは「(信仰というより)趣味で行っているから」Q.文鮮明教祖はあなたにとってどういう人ですか。「…」Q.結婚相手を文教祖が決めることをどう思いますか。「…」
少し立ち入った質問をすると口をつぐんでしまう。国民学校(日本の小学校にあたる)卒業というAさんだが、自分の名前を漢字で書くことも、生年月日をはっきり答えることもできないのであった。(中略)
統一教会の合同結婚式の内実に、韓国農村の嫁不足の現状を利用した信者獲得の目論見があることは、最高幹部が問わず語りに認めていることである。(中略)「私が教会長として(文教祖の)横で仕え、力添えをしながらも、心で日本教会長や日本人たちに少しすまないことがありました」
郭会長はその理由を、日本人女性信者は高校卒業以上の学歴が多いのに、その相手となる韓国人男性信者は小学校卒業が多いからだ、と語り、更に年齢の問題をあげる。
「韓国人信者には、年をとった未婚の男たちが多いのです。40歳、39歳、38歳と降りてくるのと比較しながら候補者の女性の写真を(文教祖に)差し上げます」「年をとった日本女性たちは写真が終わったのに、年をとった韓国男性たちはそのまま残っているので(中略)」
韓国人男性信者で、ある程度年を取った者と、日本人女性信者を結びつける、というのだ。しかも結婚を目的とした「にわか信者」が多いことは、統一教会幹部が認めるところである。(中略)興味深いのは、文教祖が語ったという次のよう発言である。
「日本女性としては、韓国に嫁に来ることが、それ以上に光栄で自慢であるので、(学歴や年齢の差は)話にもならない」(p.67-70)

(前略)合同結婚式に参加を申し込むにあたり、韓国人信者は結婚相手の「希望国家」を申込書に書くことになっていたという。Cさんは日本人を望んだ。Q.それはなぜ?「日本人はかつて韓国で悪いことをしました。しかし日本人の信者たちは、そのことを謝る活動をしています。だから希望しました」
統一教会では、戦前の日本が行ったと挑戦への侵略行為の歴史を徹底的に教育している。信者たちが日本の「負債」を韓国人信者に負っていることは、現役信者や元信者たちが一様に強調することだ。だからこそ率先して韓国人と結婚し、尽くすことが「光栄で自慢」になる。(p.71-72)

〝にわか信者〟の増加、重要な儀式の変質―今回の合同結婚式の実態は、窮地にある統一教会の現状をこれまでになくさらけ出した。
「会場のトイレに入ってびっくりしました。韓国人男性信者が7,8人集まって、みんなタバコを吸っている。そのうちの一人が慰められているので、話を聞いてみると『日本人花嫁が来ない、話が違う』と怒っているんです」(テレビレポーター・山形美房氏)
日本では、信者が酒を飲んだりタバコを吸うことを禁じている。ところが韓国の統一教会に、そんな教えはない。したがって韓国人男性を相手に選ばれた日本人信者は、あらかじめ信仰の実体が違うことを教えられている。なかには、「原理(統一教会の教え)を捨てて韓国に行きなさい」とまで言われた女性信者もいるのだ。それは、韓国と日本では教えられている内容が違うというだけではなく、「統一教会に入れば日本人女性を結婚できる」と教えられた〝にわか信者〟が多数いることの反映でもある。(p.77-78)