創氏改名 朝日社説20150302

『朝日新聞』2015/03/02の記事より

【社説】日韓国交正常化50年―悲劇の詩人の思いを胸に 

韓国で国民的詩人と慕われる尹東柱(ユンドンジュ)をしのぶ集会が没後70年の先月、日本各地で開かれた。自由を抑圧された植民統治下で、尹は研ぎすまされた感性をハングルで静かにつづった。
文学研究を極めようと、「平沼」と創氏し、立教大に入学。その後、同志社大に転学した京都で、人生は暗転する。独立運動にかかわったとして治安維持法違反の疑いで逮捕され、1945年、福岡の刑務所で獄死した。享年27。朝鮮半島が日本の支配から解放されたのはその半年後のことだ。
日本語が強要されるなか、ソウルの後輩に贈った手書きの詩集「空と風と星と詩」は、後輩の母親が床下の甕(かめ)に隠して保管しており、尹の没後3年にして出版された。有名な「序詩」はこう始まる。

(中略)

■力点は協力か支配か
日本と韓国は今年、国交を正常化させて50年を迎えた。
だが領土や歴史認識などをめぐる摩擦のために、節目の年を祝う雰囲気にないのが現状だ。韓国併合から100年に合わせた菅直人首相談話が示したように、韓国の人々は植民地支配によって国と文化を奪われ、民族の誇りを傷つけられた。韓国ではきのう、植民地下で起きた大規模な「3・1独立運動」の記念式典があった。
一方、国交締結後の多様な経済協力などで、日本は韓国の発展に大きく寄与してきた。
日本側がそうした最近の歩みに関心を偏らせ、韓国側が支配された過去だけにこだわろうとするなら接点は見つかるまい。
尹東柱は、なぜ姓を変えたのかなぜハングルにこだわったか。私たちは考えねばなるまい。と同時に韓国の人々にも冷静に、この半世紀を振り返ってもらいたい。

(後略)

http://www.asahi.com/articles/DA3S11628174.html?ref=editorial_backnumber

「創氏改名」について、このように「創氏」を強調した新聞記事はめずらしく、その部分だけ見れば従来の日本名強制説(名前の上下いずれも日本風にする説)から理解が一歩進んでいるように見える。

しかし後半に「なぜ姓を変えたのか」とあるところからすると、どうやらまだ理解が中途半端のようである。