『アボジ聞かせてあの日のことを』

 1937年に始まる日中戦争により、日本は戦争の泥沼に陥ります。そして1941年には太平洋戦争の開戦など満州事変以来、日本は人的資源供給地として韓国から多くの労働力と兵力を狩り出したのです。これが所謂〝強制連行〟と呼ばれる国民徴用令を引き起こし、終戦まで絶え間なく続いたのです。その方法も、農民たちが昼どきで一息をついている時にトラックで農村に乗り入れ、銃剣を突きつけ、有無を云わせず無理矢理に連れて行くのです。(略)

 日本の終戦により開放を迎えた1945年当時、日本に在留していた同胞は約200万人にものぼりました。この人々は皆、自分の意志に関係なくして、日帝の政策によって日本に渡らざるを得なかったのでしょう。開放と共に大半が祖国を目指して、帰国の途についたことを見ても、常に一世のまぶたの裏には故郷の山河が焼きついていたのではないでしょうか。

 (略)日帝36年間の歴史はまさに収奪と暴力の歴史であり、在日同胞の存在は日帝の歴史が造り出した産物と云っても過言ではないでしょう。あらためて、一世の歩んできた歴史が今日の韓日関係史の上で大きな位置を占めている、そのことが証言の行間から浮かび上がってくるのです。

在日本大韓民国青年会 1988 『アボジ聞かせてあの日のことを』122頁 ~鄭大均『在日・強制連行の神話』65頁

※この冊子を出した在日本大韓民国青年会という組織は民団系の青年会である。引用部分は『アボジ聞かせて~』の中の「渡日の背景」という章の冒頭に掲げられた編集者の言葉である。 (略)は鄭大均氏による省略。