最近ネット上でしばしば話題となる、朝鮮式お辞儀(コンス)と呼ばれる所作がある。
画像検索で見ていただくとわかるとおり、両手を腹部で組んで肘を張ったまま前傾するお辞儀の仕方である。
しかしこのお辞儀は、本当に「朝鮮式」なのだろうか?
私がそう疑問に感じる理由は、例として挙げられている韓国人のお辞儀画像が、どれも新しいものばかりだからである。
日本側の証言として明記しておくが、このお辞儀は、すくなくとも1970年代には日本のエレベーターガールの所作として取り入れられていたものである。
そのことは、この件でメンションをいただいた花鳥風月氏とのツイッターのやりとりでも確認されている。(以下敬称略)
筆者: このお辞儀は私が子供の頃(1970年代)からありますよ。エレベーターガールがよくやっていました。
花鳥風月: 確かにやってましたね!何故でしょうね?エレベーターガール用の教育があったのでしょうか? それを見た韓国の人が、マナーとして広めたのでしょうか?
筆者:あの立ち姿自体は戦前からあったようで、エレベの狭い空間でやるために、あのお辞儀が編み出されたような気がしますねぇ。「朝鮮式お辞儀」の資料が新しい写真ばかり?だとすれば、日本から渡った可能性もあるかもですね…(立ち姿)1枚目は出処を失念しましたが、2枚めは昭和4年の松坂屋だそうです pic.twitter.com/Fs8uQ6KaU6
花鳥風月:確かに、狭いエレベーターの中では都合の良い姿勢ですね。右側の写真の後ろの方の人は、肘が曲がってますね?私の記憶のエレベーターガールはしっかり曲げていたイメージです。
筆者:私の記憶ですと、1枚目上段男性横の女性(腕が菱形)くらいでしたかね(?)そしてそこから右腕を開くと「5階、おもちゃ売り場でございます」といった具合です笑。もちろんこれはあくまで接客ビジネス用(デパガ用?)であって学校ではやりませんし一般人もしていませんでしたが。
花鳥風月:そうそう、エレベーターの動きに合わせて、肘を軸に右手を上げたり下げたりしてましたね。 先日は100円ショップで、この挨拶をされ、驚きました(^_^;)
次の画像は、戦前のデパートガールの立姿である。(クリックで拡大)
赤下線の姿勢から、右手の肘から下を外に開くと「ご案内」のポーズとなり、 前傾すると件のお辞儀となるのである。
左側:場所は不明だが戦前のデパートガールの立姿。出典
右側:昭和4年、松坂屋エレベーターガールの姿勢。出典
※お辞儀場面の画像はあいにく見あたらなかった
この所作は、エレベーターのような狭い空間で行うために、日本の百貨店業界が編み出したものではないかと私は推測する。*1
もしこのお辞儀が本当に「朝鮮式」であるなら、朝鮮側にも古い資料が残っているはずである。
どちらが発祥なのかの判断は、あちら側の資料を見てからにしても遅くないのではないだろうか。
なおこのお辞儀について、「日本のお辞儀の仕方と異なる」と主張する人がいるが、これは接客用?の所作なのであり、一般人が行う通常のお辞儀と異なるのは当然である。
*1) もっともその過程においては西洋式のマナーなどが参考にされているかもしれないが。