その他日本国籍者

この書物の影響の範囲は広く、1970年代には朝鮮総連と日本人の合同調査団や日本人個人もしくは集団による朝鮮人強制連行調査を各地に生みだした。1990年以降、その基盤の上に毎年「朝鮮人・中国人強制連行・強制労働を考える全国交流集会」が開かれるようになった。他方、十数都道府県に朝鮮総連と日本人によって組織された「朝鮮人強制連行真相調査団」も組織された。同時に労働者、軍人、軍属、「従軍慰安婦」として強制連行された本人や遺族による戦後補償訴訟も次々と起こされた。日本人の労働者、弁護士、知識人が、朝鮮植民地支配の戦後責任を果たすためにこの訴訟に参加している。昨年12月には74の日本の労働組合がILO(国際労働機関)に対して朝鮮人・中国人強制連行問題を提訴し、本年6月現在、提訴参加組合は225の多きに達した。これらの訴訟は、先生によって始められ、蓄積されてきた朝鮮人強制連行研究が、私たち日本人歴史研究者の法廷証言・裁判所への意見書提出や弁護士の弁論を直接支えると同時に、広範な労働者に受けとめられ、そこに根を下ろした結果なのである。戦後補償を実現するにはまだ前途遼遠だが、1965年に『朝鮮人強制連行の記録』でなされた先生の日本人批判が、今日研究と実践の両面で日本人のなかにこのような形で実を結び始めたことは注目してよいと思う。
山田昭次「朴慶植先生の在日朝鮮人史研究について」『在日朝鮮人史研究』28号、1998年12月 ~鄭大均『在日・強制連行の神話』155-156頁より ※赤文字強調は筆者による